ゼロから1年で業界注目のオウンドメディアへ。大阪ガスが挑む、「体験型ふるさと納税」プロモーションの舞台裏

画像左から:XINOBIX株式会社 長屋、天野、大阪ガス株式会社 杉浦様、斎藤様
大阪ガス株式会社は、関西地域の魅力を発信する情報メディア「関西おでかけ手帖」を通じて、地域経済の活性化に取り組んでいます。
2023年に開始した「関西おでかけ納税」サービスにおいて「体験型ふるさと納税」という新しい概念の認知度向上と文化醸成に課題を抱えていました。
従来の広告手法では一時的な効果に留まることから、中長期的な資産となるプロモーション戦略を模索していた同社。
シノビクスは、約1年間にわたって同社が運営する「関西おでかけ手帖」のオウンドメディア運営を支援しました。
戦略設計からコンテンツ制作までをご支援した結果、支援から約半年で目標PV数を達成し、月間最大20万PVのメディアに成長し、事業のゴールである「納税」に貢献するまでになりました。
今回は、大阪ガス株式会社が運営する「関西おでかけ手帖」の担当者のお二人にシノビクスとの取り組みで得られた成果や率直な感想を伺いました。
認知度の低い「体験型ふるさと納税」をどうPRするかで悩んでいた
ー シノビクスにご依頼いただく前は、どのような課題をお持ちでしたか?
杉浦様:「関西おでかけ納税」は、2023年に開始した事業で、おでかけ前または中に専用サイトから納税すると、税控除に加え、その場で寄附額の30%分の「デジタル商品券」が即時発行される新しいふるさと納税制度です。

事業をスタートした当時は「体験型ふるさと納税」という言葉自体が市場に定着していない状況でした。そのため、まずはその概念を市場に浸透させ、文化を醸成することから始める必要がありました。
画像:「関西おでかけ納税」TOPページ

しかし、「関西おでかけ納税」を立ち上げたばかりの弊社には、認知拡大や文化醸成のためのプロモーション施策のノウハウがなく、どのように認知を獲得し寄附につなげていくかという課題を抱えていました。
ー そのような課題を抱えていた中で、シノビクスへご依頼いただいたきっかけはなんだったのでしょうか?
杉浦様:当時はプロモーション施策として広告出稿を行なっていました。
しかし、広告の効果は一時的なものが多く、より長期的な効果が期待できる施策を模索していました。具体的には、一度の出稿で終わってしまう広告ではなく、継続的に効果を発揮する情報発信の手法を模索していました。
そこで、デジタルマーケティングに詳しいパートナーに相談したところ、シノビクスさんをご紹介いただきました。
実は私自身、当初はSEOについての知識が全くない状態でした。しかし、シノビクスさんに基礎から丁寧にご指導いただく中で、SEOの本質的な価値に気づくことができました。特に、一時的な広告施策とは異なり、継続的な取り組みによってウェブ上の資産として成長していく点に大きな可能性を感じました。
SEOを単なるアクセス獲得ではなく、事業成功の手段として提案してくれた
ー 弊社の提案を受けてからSEOに取り組む決め手となったポイントはありますか?
杉浦様:大きく3つのポイントがありました。
1つ目は、シノビクスさんがSEOを単なる記事作成の手法としてではなく、お客様の行動プロセス全体を見据えたアプローチとして提案してくださった点です。「どのタイミングで」「どのように」情報に触れていただければ納税につながるのか、具体的な道筋を一緒に考えていただけました。
画像:お客様の購買プロセスを洗い出した資料の例

2つ目は、SEOを単なるアクセス獲得の手段ではなく、事業成功のための手段として提案していただけたことです。我々と同じ目線で、目標達成までの道筋を描いていただけたことも、大きな決め手のひとつでした。
そして3つ目は、SEOによる情報発信が一時的な広告と異なり、継続的に効果を発揮する資産となり得る点です。この特徴は社内でも高く評価され、新しい取り組みではありましたが、積極的にチャレンジする判断につながりました。
特に魅力的だったのは、お客様が加盟店の情報を検索される自然な流れの中で、「おでかけ納税」というサービスを知っていただける可能性です。このような新しい接点づくりに大きな期待を寄せていました。
加盟店ネットワークを活かした、独自のキーワード戦略
ー 具体的にどのようなことに取り組みましたか?
長屋:まず「おでかけ納税」の利用促進という目標設定からスタートしましたが、調査を進める中で、やはりこのサービスならではの課題が見えてきました。

「体験型ふるさと納税」は、従来の物品による返礼とは異なり、飲食店での食事や体験プログラムなど、その土地でしか味わえない体験を返礼品として提供する新しい形態のふるさと納税です。
しかし、この新しいサービスは一般的な認知度が低く、ユーザーから積極的に情報を探していただける段階ではありませんでした。
通常のふるさと納税であれば、市場での認知度も高く、関連する検索キーワードも豊富にあります。しかし、「体験型」に関しては、そもそもユーザーの検索ニーズが限られており、従来の関連キーワードから発想するSEOの手法だけでは効果的なアプローチが難しい状況でした。
そこで、大阪ガス様の強みである加盟店ネットワークを活用した新しいメディア戦略をご提案させていただきました。
具体的には二つのアプローチを計画しました。
まず、加盟店への来店を検討されているお客様に対して、店舗情報を調べる段階で「ふるさと納税で体験できる」という新たな価値をお伝えすること。
次に、宝塚などの加盟店が存在するエリアを訪れる方々に対して、周辺の加盟店でふるさと納税ができることをご紹介することです。
このように、お客様の自然な行動導線に沿って情報を届けることで、サービスの認知から利用促進まで、段階的にアプローチできると考えました。
そして2024年6月に「おでかけをもっと楽しく、より気軽に、おトクに」をコンセプトとして、オウンドメディア「関西おでかけ手帖」を立ち上げました。
画像:「関西おでかけ手帖」TOPページ

立ち上げ半年で10万PV、加盟店から感謝の声をいただくように
ー 具体的な成果について教えていただけますか?
杉浦様:当初目標としていた月間10万PVを立ち上げから半年ほどで達成することができ、多くのお客様にサイトを見ていただけていると実感しています。
また弊社としては挑戦的な施策でしたが、社内への報告の際も、具体的な数字で成果を示すことができた点は非常に効果があったと思います。社内でも想定以上にPVが伸びていたことで、「関西おでかけ手帖」への注目が集まっていました。
さらに嬉しいことに、サイトを訪問されたユーザーの方々から実際の納税につながるケースも確認できており、事業貢献という観点でも手応えを感じています。
今後は、これらの成果をさらに伸ばし、納税実績の向上など、事業貢献をより一層高めていきたいと考えています。
長屋:目標PV数の達成に関しては、弊社の予想以上に伸びていたので驚きました。これは弊社だけの力ではなく、大阪ガス様をはじめとする関係者の皆様でスピーディーに記事を公開できたことが大きな要因かと思っています。
斎藤様:数値的な成果であるPV数増加はもちろんですが、加盟店様にも大変喜んでいただけたことが大きな成果だと感じています。
実際に加盟店様とのメールのやり取りからも、感謝の言葉を多くいただいています。

シノビクスさんに作成いただいた記事は、複数の方法で効果的に活用させていただいています。弊社のウェブサイトでの掲載はもちろん、メールマガジンでの記事配信やSNSでの定期的な情報発信など、様々な形で展開しています。
一度作成したコンテンツを多角的に利用することで、「関西おでかけ手帖」の認知度向上に大きな手応えを感じています。今後も引き続き、現地での取材活動を含め、シノビクスさんとの協業を深めていければと考えています。
ユニークな認知向上施策として、業界からも注目される
ー 実際に取り組みを振り返って、印象に残っていることはなんですか?
杉浦様:SEOの仕組みを深く理解できたことです。
当初は私どもにSEOの知識がなく、単純に「おでかけスポットを紹介する記事を書けばよい」という認識でした。

しかし、実際には適切な記事の分量設定や、効果的なキーワードの選定、競合サイトの分析など、データに基づいた緻密な設計が必要だということを学ばせていただきました。特に印象的だったのは、「なぜこの記事を書くのか」「なぜこの分量が必要なのか」「なぜこのキーワードを使用するのか」など、全ての要素に明確な根拠があることです。このように論理的な裏付けをもって進められたことで、SEOの本質的な価値を実感することができました。
斎藤様:この取り組みの価値は社外からも評価をいただいています。以前、ガス会社同士で「体験型ふるさと納税」のPR事例を共有する会議に参加した際、弊社の取り組みとして「関西おでかけ手帖」をご紹介させていただく機会がありました。
他社の皆様からは、オウンドメディアを活用した事例が珍しいということで、非常に興味深い取り組みだとの評価をいただきました。
特に「体験型ふるさと納税」については、各社とも認知度向上に課題を感じており、現地でのPRが中心となっているようです。
そんな中、「関西おでかけ手帖」は、納税制度を知らないお客様でも、店舗検索をきっかけに自然とサイトへ誘導できる仕組みを実現している点で、新しいアプローチとして注目していただきました。
長屋:ガス会社様の情報交換会で「関西おでかけ手帖」を事例としてご紹介いただき、嬉しいです!
このプロジェクトを通じて、SEOという手法についても新たな可能性を見出していただけたのではないかと思いますが、実際に取り組まれてみていかがでしたでしょうか。
斎藤様:SEOに対する印象は大きく変わりました。
最初はキーワードのボリューム数などの数値が、どのように結果に結びつくのか理解できませんでした。
しかし、シノビクスさんから共有していただいける詳細な週次レポートを拝見していたら、キーワード数とPV数の相関関係などがデータで理解できるようになりました。
長屋:弊社はPDCAをクライアント様と一緒に回していくことを大事にしていますので、週次レポートなどのデータを、なるべくはじめてSEOに携わる方にもわかりやすくレポートすることを意識しておりました。
「寄附数の増加」に対して真摯に向き合っていただけた
ー プロジェクト全体を通して振り返って感想はありますか?
杉浦様:シノビクスさんには結果に非常にこだわっていただきました。
単にPVを増やすことが目的ではなく、より多くの人に「おでかけ納税」を知っていただき寄附をしていただくことを最終的なゴールとしていただけたことです。
どのくらい寄附に繋がったのかという点に強いこだわりを持って、一緒に取り組んでいただけたこと、弊社が最も重視するポイントに最後まで真摯に向き合っていただけたことを心より感謝しています。
斎藤様:記事制作を担当されている天野さんの迅速な対応が印象的でした。
天野さんとはチャットツールなどで頻繁に連絡を取らせていただく中で、弊社の要望にいち早く対応してくれました。
たとえば、記事に設置するCTAバナーを「キャンペーンに合わせて変更したい」と要望したところ、それぞれのキャンペーンに沿ったバナーを迅速に作成していただきました。
天野さんの迅速な対応により、「関西おでかけ手帖」の露出を増やすことができたため、キャンペーン担当としてはとても心強かったです。
天野:そのように評価いただきありがたく思います。私は大阪ガス様のプロジェクトを途中から担当させていただきました。私は途中からこのプロジェクトを引き継がせていただいたのですが、まず直面した課題が二つありました。

一つ目は、大阪ガス様のサービスエリアが非常に広範囲に及ぶため、どの地域から優先的にコンテンツを展開していくべきか、という点です。
二つ目は、「関西おでかけ納税」や「いっとくパス」など、複数のサービスが存在する中で、それぞれのサービスの関連性を把握し、効果的な導線設計をどのように行うかという課題でした。
また、成果指標の設定においても、最終的な寄附完了を目標とするのか、それとも「寄附をする」ボタンのクリック数を指標とするのかなど、細かな部分での検討が必要でした。
こうした課題に対して、各エリアの担当者の方々と綿密な連携を図り、お客様の行動分析から最終的な寄附獲得までの流れを丁寧に整理していきました。この地道な取り組みが功を奏し、目標としていた月間PV数を予想以上のスピードで達成することができました。
ー 今後取り組んでいきたいことはありますか?
杉浦様:今回のプロジェクトでは、取材や記事作成を通じて加盟店様から好評をいただき、手応えを感じています。
画像:加盟店を訪問し、取材した記事

今後は、加盟店様とのつながりをさらに深め、直接的なコミュニケーションを通じて「おでかけ納税」への理解を深めていただき、「関西おでかけ手帖」を通じた情報発信にもご協力いただけるような関係構築を目指してまいります。
天野:これまでは基本に忠実な記事作成で一定の成果を上げることができましたが、今後は記事の質的向上にも注力していきたいと考えています。取材にご協力いただいた方々からは現状でも好評をいただいていますが、さらなる改善の余地があると感じています。
例えば取材記事をもっと増やし、「関西おでかけ手帖」独自の情報発信にこだわっていきたいですね。
弊社が掲げている「1記事入魂」をモットーに、より多くの方に価値を実感していただける記事作りを心がけ、読者の皆様の満足度向上に努めてまいります。
そして目標達成のために、「関西おでかけ手帖」の記事をさらに効果的に活用し、より良い情報発信を実現できればと思っています。
広告だけでは届きづらいサービスをPRしたい企業におすすめ
ー 最後に、シノビクスのサービスは、どのような企業との相性が良いとお考えですか?
杉浦様:ターゲット層が明確になっていない企業におすすめだと思います。
今回の「おでかけ納税」は、「ふるさと納税に興味がある人」「おでかけする人」「30代サラリーマン」「女性」など、非常に広範なターゲット設定でした。
そのような漠然としたターゲット層に対して、より具体的なペルソナ設定のサポートから、効果的なSEO施策の展開まで、一貫してご支援いただけることが大きな強みだと感じています。

斎藤様:新規事業や認知度が低いサービスをPRしたい企業と相性が良いと考えています。
例えば「体験型ふるさと納税」のような認知度の低いサービスの場合、通常の広告展開では「これは何?」という段階で終わってしまう可能性が高いのですが、SEOを活用することで、潜在的なニーズを持つユーザーの導線に自然に組み込むことができます。
そのため、新規事業や認知度が低いサービスをWeb上でPRしたい企業にはシノビクスさんのサービスが効果的だと思います。
長屋:とても嬉しい評価をありがとうございます。弊社が大事にしている支援の形を言葉にしていただき大変ありがたく思います。
ー ご協力いただきありがとうございました!