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オウンドメディア

BtoBのオウンドメディアを12社の事例で徹底解説(業種・業界・企業規模ごと)

BtoBのオウンドメディアを12社の事例で徹底解説(業種・業界・企業規模ごと)

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長屋智揮
著者プロフィール
長屋智揮

XINOBIX(シノビクス)株式会社 代表取締役。これまで数百サイトのWEBメディアの運営に携わる。コンテンツSEO・オウンドメディア運用が専門。

オウンドメディア支援を行うXINOBIX(シノビクス)には、
日々、法人向けサービスを行うBtoB企業から

「うちもオウンドメディアをやってうまくいくの?」
「オウンドメディアを立ち上げたけど、商談や売上につながらない…」
「成功事例はよく聞くけど、自社に合ったやり方がわからない」

といった相談やお悩みが多数寄せられます。

オウンドメディア運用は数あるデジタルマーケティング施策の中でも、トップクラスに難易度が高く、私がこの7年ほどで関わったオウンドメディア100サイト程度の中で、いまだに運営されているオウンドメディアは体感で10%ほどではないかと思います。

しかし、これまでに難易度が高いと言われているオウンドメディアの運用に、成功している企業も数多く見てきました。

実際に私が携わってきたBtoB企業のオウンドメディアでは以下のような事例があり、一定の成功パターンを満たせば、事業を大きく伸ばすことができます。

  • 月に数本のコンテンツを作り、受けきれないほどの問い合わせを獲得している、少数精鋭のコンサルティング会社
  • ニッチな業界ながら、どのキーワードで検索しても1位か2位に表示され、月間100件以上ものリード獲得型をしているオウンドメディア
  • 立ち上げた後、8ヶ月程度で累計数百件のリード獲得に寄与したツールベンダーのオウンドメディア

また、BtoBでは1件受注すると数百万〜数千万円の売上になることが多く、仮にオウンドメディアに年間1,000万円のコストをかけたとしても、2年間に数件受注できれば採算が取れることもあります。

長屋

個人的にもクライアントさんと努力を積み重ね、オウンドメディアを起点としたお問い合わせが、大型の受注につながった時には心の底から感動します。

本記事では、これまで多数のBtoBオウンドメディアのプロジェクトに携わってきたシノビクスが、企業や事業の内容ごとに合ったオウンドメディアの考え方や事例をご紹介します。

この記事で分かること

  • BtoBオウンドメディアの型を事例から学ぶことができる
  • 自社の事業内容やフェーズに近い事例を見つけ、方針策定の参考にできる

企業タイプごとのオウンドメディアの成功事例をすぐに見たい方は、こちらからご覧ください。

12社の事例で解説!BtoBオウンドメディアの業界・事業別の戦略

目次

BtoBにおけるオウンドメディアとは?

オウンドメディアとは?

まず、当記事で解説するオウンドメディアの定義をしておきます。

オウンドメディアとは、企業や個人が自社や自身で所有するWebサイト、ブログ、SNS、メールマガジンつまり、「自社でコントロールできる」メディアのことを指します。

その意味では、企業のSNSやYouTube、メールマガジンなどの「オウンドメディア」の一種であると言えます。

他に「アーンドメディア」「ペイドメディア」とあわせて「トリプルメディア」とも呼ばれています。

図:トリプルメディア

概念意味
オウンドメディア企業や個人が主体となって情報発信するメディアWebサイト、ブログ、SNS、メールマガジンなど
アーンドメディアユーザーによって情報発信されるメディア口コミ、評判、SNSでの拡散など
ペイドメディア広告費を支払って掲載するメディアネット広告、テレビCM、新聞広告、インフルエンサーによる広告など

日本においては、自社で取得したドメインで立ち上げる「記事型メディア」を指すことが多く、実際、シノビクスにお問合せいただく場合の90%はこの「記事型メディア」になります。

オウンドメディアの目的とは

また、オウンドメディアには大きく「売上」「採用」といった二つの目的があります。

目的コンテンツ
売上増加問い合わせ獲得につながるお役立ち情報や事例
人材採用採用につながる社員インタビュー

BtoBのオウンドメディアについて情報収集をしている方の多くが、最終的には「売上増加」を目的としているため、この記事ではリード獲得やお問い合わせ増など、「売上増加を目指す記事型メディア」について解説をします。

オウンドメディアにおけるBtoBとBtoCの違い

オウンドメディアにおいてBtoBとBtoCで考え方や運営手法がやや異なります。

シノビクスでもこれまで、BtoC(語学、美容、電力、食品など数十市場)のオウンドメディアも多数支援する中で、BtoBとBtoCの違いは主に以下であると考えています。

図:BtoB・BtoCのオウンドメディア運営における一般的な違い

BtoCBtoB
目的認知/ブランディング/商品購入
来店予約/無料体験/資料請求
ホワイトペーパー/資料請求/ウェビナー申し込み/問い合わせ
対象者購入者/購入者の家族・知人担当者/決済者/紹介者
対象者数
流入チャネルSEO/Twitter/Instagram
YouTube/メルマガ
SEO/メルマガ/Twitter(一部の業界に限られる)
扱うトピックトレンド/おもしろ系/体験談
お悩み・コンプレックス解決
商品の使用感や説明/お客様インタビュー
業界トレンド/専門ノウハウ
専門用語解説/製品比較/導入事例
イベント・セミナーレポート
想定アクセス数1万~500万1,000~100万
競合多くの業界で競合企業やアフィリエイトサイトと熾烈な争いがある比較的競合が少なく、業界によってはブルーオーシャン
成功要因情緒的要素専門的要素
特有の課題・YMYL(金融、医療等)の業界では対策難易度が高く、上位表示できるサイトが限られる・専門性が高くコンテンツの作り手が限られる
・検索数されるキーワード数が少ない

BtoBのオウンドメディアにおいてBtoCと特に異なる点は、少ない対象者(担当者/決済者/紹介者)に対して自社の価値を訴求することにあります。

具体的には、自社の専門性や信頼性を十分に伝えし、発注先としての検討のテーブルに乗ることです。

そのため、アクセス数にこだわるのではなく、限られた対象者にコンテンツを通じて、自社の価値を訴求することが重要になります。

BtoBオウンドメディアには「雑誌型」と「パンフレット型」がある

オウンドメディアにおいて、ウェブ版の「雑誌」をイメージをする方もいるかと思います。しかし、BtoBのオウンドメディアにおいては、必ずしも雑誌のように面白いコンテンツを発信し続けないといけないわけではありません。

当社ではオウンドメディアに取り組む際、まずは「パンフレット」のように商品やサービスの周辺情報をコンテンツ化することを推奨しています。

「雑誌型」と「パンフレット型」の違いは、オウンドメディアで発信するコンテンツの性質にあります。

これを理解するには、オウンドメディアのコンテンツをストックとフロー、潜在層と顕在層に分けて考えると分かりやすいです。

ストックとは、ノウハウや自社事例など、一度作ってしまえば長期的に活用できるコンテンツを指します。このようなコンテンツは賞味期限が中がく、検索エンジンからも安定したアクセスを集めやすいです。

一方でフローとは、業界のニュースやセミナー情報など、情報の鮮度が重要になり、ある時期を超えると活用しにくいコンテンツです。このようなコンテンツは一時期はSNSなどで話題になっても、検索エンジンからの安定したアクセスは得にくいです。

また、顕在層は商品の購入を具体的に検討している顧客層のことで、今すぐ客ともいいます。一方で、潜在層はまだ商品を購入するほどの欲求やニーズが高まっていない顧客です。

これらを以下の4章限に分けてみます。

  • 1.ストック(ノウハウ、事例)×顕在層(いますぐ客)
  • 2.フロー(最新情報、ニュース)×潜在層(まだまだ客)
  • 3.ストック(ノウハウ、事例)×顕在層(いますぐ客)
  • 4.フロー(ニュース、セミナー情報)×潜在層(まだまだ客)

BtoBオウンドメディアコンテンツ4象限

これらの象限をまたぎ、全方位的にコンテンツを展開するオウンドメディアを「雑誌型」とします。顧客の検討フェーズや情報の鮮度を問わず、ありとあらゆる業界の情報を発信するメディアです。

一方で、最も費用対効果が高い右上の象限のコンテンツを中心に発信するオウンドメディアを「パンフレット型」と定義します。

図にすると以下のようなイメージです。

BtoBオウンドメディア「雑誌型」と「パンフレット型」の違い

1.「雑誌型」のオウンドメディアの特徴

「雑誌型」のオウンドメディアとはできる限り多くのユーザーに対して、あらゆるタッチポイントで情報発信をする業界紙のようなオウンドメディアのことを指します。

購買ニーズを問わず、「事例」「最新トレンド」「ノウハウ」「イベントレポート」などを、メルマガ、検索エンジン、SNS、他社メディアなど幅広いチャネルで情報発信していることが特徴です。

「雑誌型」のオウンドメディアにおいては、次のような特徴があります。

「雑誌型」のオウンドメディアの特徴

  • 最新情報やニュースを高頻度で発信している
  • 独自の取材をおこなっている
  • 専任の編集長や担当者が在籍している
  • コンテンツを既存顧客向けメルマガ、広告、SNS、SEOなど多くの経路で届ける

雑誌型のオウンドメディアの例として、NECが運営している「wisdom」があります。

NECのオウンドメディアwisdom
wisdom あなたのビジネス思考に、ひらめきを。

wisdomのコンテンツを分類すると、以下の図のように全方位的なコンテンツを展開していることがわかります。

wisdomのオウンドメディアコンテンツ分類

「wisdom」は2004年から運営され、84万人もの会員データを持つ大規模なオウンドメディアです。

コンテンツのテーマは、非常に幅広くノウハウ、イベントレポート、自社の事例など幅広く、具体的には以下のようなテーマでコンテンツが公開されています。

カテゴリ記事タイトル
事例AIが営業をサポート 社員数を増やさずに売り上げを伸ばす大塚商会の「秘訣」とは?
コラム(SEO記事)SDGsへの企業の取り組み方とは?事例やメリット、注意点を解説
イベントレポート貯蓄から投資へ―日本の資産運用サービスが目指すべき姿~FIN/SUM 2023レポート

2.「パンフレット型」の特徴

「パンフレット型」のオウンドメディアとは、特定の商品・サービスについて、商品や周辺情報に絞った情報を発信するオウンドメディアを指します。

購買ニーズが高く、導入を具体的に検討している層に向け、比較的変動の少ない「事例」「ノウハウ」といったコンテンツを発信し、主に検索エンジンからアクセスを獲得していることが特徴です。

「パンフレット型」のオウンドメディアにおいては、次のような特徴があります。

「パンフレット型」のオウンドメディアの特徴

  • コンテンツは、商品に直接関係する情報および周辺の情報に限定している
  • 執筆は社内で行うか、専門知識を持った外部編集者と共同で行う
  • トレンドに大きく左右されにくく、資産性の高い情報を中心に扱う
  • 主に検索エンジンを通じて情報を能動的に探している人にアプローチする

「雑誌型」と比較して、取り扱うテーマや、作成するコンテンツの量が限定されており、頻繁に更新する必要がないため、大規模な投資をしなくても運営が可能というメリットがあります。

「パンフレット型」のオウンドでキーエンスが展開するオウンドメディア群が有名です。

キーエンスが運営するオウンドメディアの一つ「静電気ドクター」

キーエンスのオウンドメディアを分析したTweetをしたところ、多くの反響がありました。

キーエンスのオウンドメディアで注目すべきところは、ソリューションごとに紐付いた大量のオウンドメディア群があることでしょう。

数えてみたところ、2023年4月時点で、80サイト以上のオウンドメディアが運営されています。

画像:キーエンスのオウンドメディア群

キーエンスのオウンドメディア群

それぞれの製品に関して、一つのメディアあたり20〜30記事が存在しており、商品サイトだけでは拾えない細かい疑問をオウンドメディアでカバーしています。

キーエンスのコンテンツを分類すると、以下の図のように、「ストック×顕在層」を中心にコンテンツを展開していることがわかります。

キーエンスのオウンドメディアコンテンツ分類

「雑誌型」と「パンフレット型」の比較

また、それぞれの特徴を比較したのが以下の表です。

パンフレット型雑誌型
目的資料請求/ウェビナー申し込み/問い合わせ資料請求/ウェビナー申し込み
問い合わせ/ブランディング/採用
対象数
更新頻度まとめて作成、適宜更新月に10~30本
対象層顕在層〜準顕在層顕在層〜潜在層
コンテンツ量年間10-50本年間100本〜1,000本
扱うトピック専門的なアドバイス
専門用語解説/導入事例
業界トレンド/独自取材
専門的なアドバイス/専門用語解説
製品比較/導入事例
アクセス数数百〜数千/月数万〜数十万/月
流入経路SEO/メルマガTwitter/SEO/メルマガ
プレスリリース/タイアップ
記事広告
予算(社員人件費+外注費)年間100万~1,000万年間500万~数千万円

シノビクスはオウンドメディアを初めて運営する会社には、運営難易度が比較的低い「パンフレット型」を推奨しています。経験がないまま、いきなり「雑誌型」を選択してしまうと、リソースが分散して、必ずといっていいほど運営が頓挫してしまいます。

まずは、「パンフレット型」の運営からスタートして、費用対効果を判断しながら「雑誌型」への転換を検討することをおすすめします。

BtoBオウンドメディアをやるべきわかる5つの判断基準

BtoBにおいて、オウンドメディア運営は有効であることは多いですが、自社で取り組むかの判断にはやや慎重になった方がいいと考えています。

ここでは、BtoB企業がオウンドメディアをやるべきかの判断基準を5つ紹介します。

BtoB企業がオウンドメディアをやるべきかの5つの判断基準

      ①特定キーワードのSEOで勝てる可能性があるか
      ②コストとリターンが見合うか
      ③受注に近いコンテンツを作り切っているか
        ④事業やサービスが確立しているか
        ⑤コンテンツの作り手がいるか

①特定キーワードのSEOで勝てる可能性があるか

BtoBのオウンドメディアを成功させる上で、検索エンジンから集客することは非常に重要です。

以下のデータは、法人の担当者が新しいサービスを探す際に企業サイトを探す手順についてのアンケートです。

https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23631/108/23631-108-99531f40de26a5753f8f6f16badce6e7-1920x1080.png?format=jpeg&auto=webp&quality=85,65&width=1950&height=1350&fit=bounds

商品サービスを探す際、「検索エンジンで検索」が約7割
「検索結果の1ページ目までしか見ない」が7割超

サイトエンジン株式会社

こちらのデータを見てもわかる通り、BtoBにおいては、圧倒的に検索エンジンが使われる傾向にあります。「特定の検索キーワードで上位に出るか、比較サイトにまとめられることでその会社を知る。」という認知経路が多くを占めると考えられます。

また、Googleの調査によると、特定の企業サイトを訪問するまでに平均して12回の検索がされるようです。

図:特定のブランドサイトに訪問するまでの平均検索回数

The Changing Face of B2B Marketing

そのため、オウンドメディアで集客をする上で、検索エンジンによって集客ができそうか(=SEOで競合に勝てるか)どうかの観点は非常に重要です。

SEOで勝てるかどうかは、そのキーワードにおける競合サイトと自社サイトの相対的な差で決まります。

参考として、以下の図は、業界ごとに競合サイトの上位10サイトの強さとして、ahrefsのドメインランク(以降DR)を比較したものです。

図:業界ごとの競合サイトの強さ(DRが高いほど、競合が強い傾向にある)

業界キーワード月間検索数TOP10位DR
法務秘密保持契約8,10062
人事相対評価5,40058
マーケティングコンテンツマーケティング6,60055
物流マテハン6,60044
製造板ばね6,60036
出典:ahrefsのデータを元に、上位10サイトのドメインランクを平均

法務、人事、マーケティングといった業界ドメインランクの高い競合が多く、検索上位を狙った熾烈な争いが繰り広げられています。

一方で、物流、製造などの産業であれば、SEOに投資する競合の数が比較的少なく、しっかりと投資をしていけば、検索上位に上がる可能性は高くなります。

そのため、まず、検索エンジンで上位を獲得するために、自社の業界だとどれぐらい難易度が高そうなのかを判断しておきます。

あくまでも目安ではありますが、自社がSEOで勝てる見込みがあるかの判断基準として、以下があります。

自社がSEOで勝てる見込みがあるかの判断基準

  • 狙っているキーワードで検索した時に、自社よりも知名度の低い企業が多い
  • 1位〜10位までが1,000-2,000文字程度の短いコンテンツで占められている
  • キーワードにマッチしたコンテンツが少なく、政府のレポートやYahoo知恵袋の回答が出てくる

もし判断に困った場合は、シノビクスでも貴社のウェブサイトが上位に表示できそうかどうかの無料相談を受け付けていますので、まずはお問い合わせください。

検索上位に上がりそうか聞いてみる

②コストとリターンが見合うか

マーケティングの原則として、その企業によって費用対効果が高い施策を実施することが重要です。オウンドメディアの運営に力を入れると、社内の人件費を入れると年間で100万〜1000万程度の費用が発生します。そのため、 費用対効果が合うか事前に想定しておく必要があります。

大前提として、 オウンドメディアを立ち上げてから、最初の問い合わせが入るまでには早くて3ヶ月ほど、平均的には半年後から成果が発生すると考えておいた方が良いでしょう。

そのため、運営してすぐに成果が出ないからといって途中でやめてしまっては、施策の意味がありません。

それを踏まえた上で、オウンドメディアの費用対効果を判断するために、シノビクスでは以下のような要素に分解してシミュレーションをすることが多いです。

図:BtoBオウンドメディアのシミュレーションの考え方

BtoBオウンドメディアのシミュレーション

例えば、オウンドメディアを立ち上げてから2年で、市場におけるキーワードの月総検索回数が年間400万回で5%のシェアを獲得した場合には、次のようなシミュレーションになります。

図:オウンドメディアを立ち上げで2年間のシミュレーション例

KPI数値(累計)
キーワードの総検索数400万回
検索における市場シェア5%
訪問ユーザー数20万訪問
LPのクリック率2%
LPの訪問数4,000
CVR10%
お問い合わせ数400件
商談化率30%
商談数120件
受注率30%
受注数36件
平均単価300万円
売上1億800万円
総コスト(2年)1,500万円
お問い合わせ数には、資料ダウンロードやウェビナー申し込みも含まれます。
TwitterなどのSNS流入な不確定な要素が多いためここでは除外しています。

あくまでシミュレーション上の数値ではありますが、1500万円の投資に対して1億800万円のリターンが得られることになります。

これにより、 1年間でどれくらいのコストをかけるべきなのが、リターンがありそうかが見えてきます。

③受注に近いコンテンツを作り切っているか

コンテンツマーケティングにおいて、 マーケティング全体のプロセスの中で、受注に近いユーザーに向けたコンテンツを優先するのが重要です。

なぜなら、サイト内で商品やサービスの説明が不足していたり、お客様の声や導入事例など信頼を獲得するコンテンツがなかったりすると、 サイトに訪問してくれたユーザーが何も行動を起こさずに離脱してしまいます。

サイトが「ザル」のように水漏れを起こしている状態では、せっかくコンテンツを作っても自社の問い合わせにつながりません。

これを防ぐために、オウンドメディアを始める前に以下のコンテンツを整理しておきましょう。

受注に近いコンテンツの例

  • サービス紹介LP
  • お客様の声/実績/導入事例インタビュー
  • お問い合わせ先の明確化
  • 資料請求フォームの設置

④事業やサービスが成立しているか

事業が安定していない以下のような場合、オウンドメディアでコンテンツを量産するにはまだ早すぎます。

オウンドメディアの立ち上げがまだ早いケース

  • 立ち上げたばかりの新規事業で、売上がまだ生まれていない
  • 営業活動をまだ行なっておらず、売れるかどうか分からない
  • 市場が存在しているのかも分からない

このような場合、サービスが途中でまるっと変わる可能性があり、コンテンツにコストをかけて作ったとしても、無駄になってしまう可能性があります。

新規事業においては、まだ収益が出ないうちはオウンドメディアに投資するのは早いかもしれません。

このフェーズでは、自社サイト内での情報発信よりも、noteなどSNSと相性の良いチャネルに特化した情報発信の方が向いているケースがあります。

⑤コンテンツの作り手がいるか

BtoBにおけるオウンドメディアの肝は、良質なコンテンツを定期的に更新する体制にあります。そのために重要なのは、書き手(ライター)の執筆クオリティーとリソースの確保です。

コンテンツを内製する場合は、現場で実務を担当している社員が兼務で執筆することが考えられますが、兼務の状態では十分に時間を割くことが難しいことが多いです。

そのため、コンテンツ制作を一部外注する選択肢を考慮に入れる必要があります。

その際、外注先の書き手を選ぶためには、次のような基準で判断すると良いでしょう。

コンテンツ制作を外注する際の、作り手の選び方

  • その業界で実務経験があるか
  • 自社の方針を理解したライティングができるか
  • ビジネスレベルの論理性や文章表力があるか

例えば、営業、人事・労務、マーケティングの分野は業界経験者のあるライターが比較的多く、書き手に困ることはあまり多くはありません。

一方で、建設、物流、製造業などは、専門性のあるライターが少なく、書き手を見つける難易度が高いこともあります。

そのため、内製するか、外注するか、その場合のコストを考えた上でオウンドメディアの運用ができるかを判断する必要があります。

図:コンテンツ制作を外注する場合、内製する場合のメリット・デメリット

メリットデメリット
内製事例などを踏まえたオリジナリティの高いコンテンツを作れるコンテンツ作成のリソースが足りず、更新が安定しない
外注コンテンツを一定品質で量産することができる制作を丸投げする場合、金太郎飴のような平凡なコンテンツになりがち

BtoBオウンドメディアを12社の事例で解説!【業界・業種別】

この章では、さらに具体的な戦略をイメージできるよう、業種や業界ごとにBtoBのオウンドメディア戦略を紹介します。

ここでは、オウンドメディアのタイプとして、特徴的が出やすい4タイプに分けて、それぞれのオウンドメディア戦略を解説していきます。


自社に近い企業の事例をぜひ参考にしてみてください。

少数精鋭のサービス・コンサルティング企業【BtoBオウンドメディア事例】

社員数名〜15名程度の、コンサルティング・サービス系企業のオウンドメディアの考え方です。

項目詳細
業界・業種経営・人事・営業・マーケティングなどのコンサルティング、サービス提供会社
組織規模社員数1名(代表のみ)~15名程度
市場フェーズ歴史があり既に成り立っている市場の中で生まれた新規カテゴリ
事業フェーズサービスが確立されており、LPにもサービス内容が明記されている
マーケティング状況既存顧客からの紹介、代表の個人的なつながりから受注に至る
マーケティング課題集客が代表や役員に依存しており、 新規顧客との接点を持っている仕組みを作りたい
メディアの目的質の高い問い合わせの獲得
目指すべき型パンフレット型
営業体制営業担当がいないため、代表や役員が自ら営業する
予算100万円〜500万円(社内人件費含む)

少数精鋭企業のオウンドメディアの特徴

強みになりえること

以前、少数精鋭の企業のコンテンツマーケティングで以下のようなTweetをしたところ、多くの反響をいただきました。

Twitterの背景となったのは、このタイプの企業の強みは「コンテンツ濃度の高さ」にあります。

具体的には、以下のような状態がこの強みを形成しています。

少数精鋭企業のオウンドメディアの強み

  • 対応できる受注件数が限られているため、 質の高い問い合わせ獲得に集中できる(量産する必要がない)
  • 競合が比較的少ない特定のニッチ分野を取り扱っており、情報発信している競合が少ない
  • 代表や役員レベルがコミットできれば、他に出せない質の高いコンテンツを作ることができる

課題になりやすいこと

一方で課題としては以下のものがあります。

少数精鋭企業のオウンドメディアの課題

  • 代表や役員が書くことに慣れておらず、せっかくのコンテンツが読まれるフォーマットになっていない
  • コンテンツの専門性が高く、任せられる人が他にあまりいない
  • 経営陣が日々の業務で忙しすぎてコミットができない

成功のポイント

少数精鋭企業のオウンドメディアの成功のポイント

  • 「いますぐ客」に対して「ストック」型のコンテンツを作る
  • コンテンツの濃度を上げ、SEOだけでなくSNSや社内チャットでの拡散を狙う

このタイプの企業は、リソースが多くはないため、まずは「パンフレット型」のオウンドメディアを作り、「いますぐ客」に対して「ストック」型のコンテンツを作ることがおすすめです。

リソースに限界がある分、いかにコンテンツ濃度を上げ、SEOのみでなくSNSやダークソーシャル(社内チャットなど)で対象顧客にリーチしていけるかが重要です。

高品質で熱量の高いコンテンツは、Twitterとの相性が良いため、Twitterで画像付きの投稿を積極的にしていきましょう。

Tweet:画像付き投稿の例

事例①unname Knowledge Blog(株式会社unname)

企業名株式会社unname
オウンドメディアunname Knowledge Blog
事業内容BtoBマーケティング支援
オウンドメディアの型パンフレット型(一部ニュース等のフローコンテンツもあり)
コンテンツBtoBマーケティングノウハウ、ニュース記事
記事本数・公開頻度約40記事(2023年4月時点)/月3~4本

unname Knowledge Blogの特徴

  • BtoBマーケティング関係のキーワードで上位表示
  • SEOを狙ったノウハウ記事、ニュース記事をバランスよく配信
  • 受注につながるリードの獲得に成功

シノビクスが過去にご支援した、BtoBマーケティングの支援を行う株式会社unnameのオウンドメディアです。BtoBマーケティングのコンテンツに特化し、ストック型のノウハウ記事、フロー型のニュース記事をバランスよく配信しています。

unnameがBtoBマーケティング支援サービスをスタートしたばかりの頃は、SEOは一切行っておらず、サービスサイトからの問い合わせもほとんどありませんでした。そこで、まずはBtoBマーケティングに関する特定のキーワードを狙ったコンテンツを作成し、立ち上げ数ヶ月で1位を獲得するコンテンツも生まれました。

結果として、検索上位のページから実際に問い合わせが来て、次々と新規商談、受注につながるようになりました。

検索結果において、競合大手のサービスとも肩を並べられたことで、会社のブランディングにも良い影響が及びました。

詳細は以下の事例をご覧ください。

事例②株式会社Pro-D-use

企業名株式会社Pro-D-use
オウンドメディア経営コンサルコラム
事業内容中小企業向けの経営コンサルティング
オウンドメディアの型パンフレット型
コンテンツ新規事業の立ち上げや経営コンサルティングに特化したSEOコンテンツが中心
記事本数・公開頻度約100本/週1本程度

Pro-D-use 経営コンサルコラムの特徴

  • 「新規事業」「経営コンサルティング」分野のキーワードで上位表示し、安定した問い合わせを獲得
  • コーポレートサイトの情報が充実しており、問い合わせの質が高い

シノビクスが過去にご支援した、中小企業向けの経営コンサルティングを行う株式会社Pro-D-useのオウンドメディアです。

キーワード順位(2023年5月1日)
新規事業 課題1位
新規事業 事例1位
新規事業 立ち上げ5位

特に新規事業の立ち上げコンサルティングに強みを持ち、新規事業に関するミドルワード〜ロングテールまで網羅的にコンテンツを作成し、上位を獲得しています。

また、コーポレートサイトの情報が非常に濃密で、一度来訪したユーザーを問い合わせに転換するコンテンツ力のあるサイトが特徴です。

事例③日本人事経営研究室株式会社

企業名日本人事経営研究室株式会社
オウンドメディア日本人事コラム
事業内容人事評価制度構築、運用支援
オウンドメディアの型パンフレット型
コンテンツ人事評価制度に悩む社長や人事向けのコンテンツ
記事本数・頻度約110記事

日本人事経営研究室 日本人事コラムの特徴

  • 中小企業の人事制度・経営計画に関するキーワードで上位表示多数
  • 書籍や広告など複数チャネルに展開
  • 記事ごとに分脈に合ったCTAが設計された、資料ダウンロードへの自然な設計

中小企業向けに人事評価制度の構築、運用コンサルティングを行う日本人事経営研究室株式会社のオウンドメディアです。ウェブサイトだけではなく、書籍の出版を積極的に行っており、アマゾンでも高評価のレビューが多数付いています。

このオウンドメディアの特徴として、記事内のCTAの最適化や、コンテンツのバリエーションが多様であることが挙げられます。

例えば、「調整給」のキーワードで1位 (2023年4月時点)に表示されているコンテンツには、ページのファーストビューに調整給の運用サポートするExcel資料が設置されています。

また、ページごとに文脈に合ったフォーム一体型のCTAが設置されており、ページに訪問した人が、個人情報と引き換えに資料をダウンロードし、日常的に資料を使い、企業を想起させるまでの導線が美しく設計されています。

事例④業務マニュアルTips(ナビゲート有限会社)

企業名ナビゲート有限会社
オウンドメディア業務マニュアルTips
事業内容教材・マニュアル制作事業
オウンドメディアの型パンフレット型
コンテンツ業務フロー・業務マニュアルの作り方
記事本数・頻度60記事程度

ナビゲート 業務マニュアルTipsの特徴

  • 業務マニュアルというニッチなテーマに関して、どこにもない深く掘り下げられたコンテンツが掲載されている
  • SEO施策はなされていないが、業務マニアル関連のキーワードで上位に上がっている
  • 日々の業務で得られたノウハウや知識を、無理なく発信している

業務マニュアルの作成支援などを行う、ナビゲート有限会社のブログです。コンテンツの公開頻度は高くはありませんが、おそらく創業当初から長期に渡ってコツコツと情報発信をされているものと考えられます。

こちらの事例をTweetしたところ、3,000いいねを超える大きな反響がありました。

注目すべきは、現場で活躍されている社員の方が、業務で得た知識を無理ない範囲で発信していることにあると思います。

このような規模の会社の強みではありますが、少数精鋭がゆえに、少なくとも濃度の高いコンテンツを出し、それが顧客の評判を呼ぶといったプラスに働いているのではないかと考えられます。

スタートアップのSaaS・人材・コンサル・受託企業【BtoBオウンドメディア事例】

BtoB SaaSを中心とし、資金調達をして短期間で急成長を目指す経営スタイルが特徴的です。すでに上場を果たしている企業も含まれます。

項目詳細
業界・業種会計、人事労務、法務などのSaaS、SFA、MA、CRM、コンサル、受託開発など
組織規模社員数30-500名
市場フェーズ競合がTVCMやタクシー広告を出し徐々に認知が広がっている
事業フェーズシリーズB〜上場後
マーケティング状況Facebook広告、展示会、ウェビナーなどは一通りやっている
マーケティング課題リード数が足りない。オーガニックリードをメインチャネルの一つにしたい。
メディアの目的リード獲得の最大化
目指すべき型パンフレット型→雑誌型
営業体制The Model型の営業プロセスが確立され、
獲得したリードに対してインサイドセールスが対応できるキャパシティがある
予算年間300万〜数千万(社内人件費含む)

スタートアップのオウンドメディアの特徴

強みになりえること

この企業の特徴として、以下の強みがあります。

スタートアップのBtoBオウンドメディアの強み

  • 急成長企業という魅力的な成長環境により、デジタルマーケティング経験のある人材の採用力が高い
  • 外部人材をうまく活用して、オウンドメディアを速やかに立ち上げられる
  • 定量・定性データを元に、PDCAを回していける

課題になりやすいこと

このタイプの企業のオウンドメディア担当者にヒアリングすると、以下が課題になっているケースをよく聞きます。

スタートアップのBtoBオウンドメディアにありがちな課題

  • 成長を急ぐあまり、短期間で大量のコンテンツを作ることで、品質が低くなっている
  • アクセスが激増し、資料ダウンロードによってリードは集まったが、商談や成約につながらない
  • 前任者がコンテンツを大量に作ったものの、成果が思うように出ないまま放置されている

成功のポイント

こういったオウンドメディアにおいては、マーケティング全体の戦略の中で、カスタマージャーニーに基づいたオウンドメディアの設計をすることが重要です。

図:カスタマージャーニーの例

具体的には、次のことを検討する必要があります。

スタートアップのBtoBオウンドメディアの成功のポイント

  • マーケティング全体のファネルの中で、コンテンツの位置づけを設計する
  • ページごと問い合わせ地点を考える(資料請求、ホワイトペーパー、ウェビナー、申し込み等)

このフェーズの企業のオウンドメディアでは、記事の量が非常に多く、記事ごとに最適なCTAが設置されていないことも多いです。

非常に手間のかかる作業ではありますが、記事ごとに細かくCTAをチューニングしていくことで、大きく成果が変わることがあります。

また、アクセスを増やすために、潜在層(まだまだ客)向けのコンテンツに偏りすぎているケースも散見され、顕在層(今すぐ客)を取りこぼしていることがあります。

次に紹介する「株式会社SmartHR」のように、オウンドメディアのコンテンツをマッピングし、どのフェーズのどんなコンテンツが存在しているのかを整理し、自社に必要なコンテンツを明確にしていくとよいでしょう。

事例⑤SmartHR Mag.(株式会社SmartHR)

企業名株式会社SmartHR
オウンドメディアSmartHR Mag
事業内容SmartHR の企画・開発・運営・販売
オウンドメディアの型雑誌型
コンテンツ人事・労務領域における法改正情報、最新のトレンド情報、イベントレポート、専門家
記事本数・公開頻度1,000記事程度

SmartHR Magの特徴

  • 2016年5月に開始~約8年で約1,000記事を公開し、累計2,000万人に読まれている
  • パーセプションフローモデルの構築により、実際のお客様の認知に基づいた明確な戦略設計がされている
  • 社内のマーケターの方々が、noteで積極的に情報発信している

「SmartHR mag.」は、クラウド人事労務ソフト「SmartHR」が運営するオウンドメディアです。

人事・労務領域における法改正情報、最新のトレンド情報、イベントレポート、専門家の見解など、人事・労務に関わるビジネスパーソンや経営者に向けた情報を提供しています。

特にBtoBのオウンドメディア運用として注目すべきは、パーセプションフローに基づいた緻密なコンテンツ戦略でしょう。

パーセプションフロー・モデルとは、一連の購買行動プロセスを「自然な認識変化の流れ(パーセプションフロー)」として描き、組織的な協働を可能にするマーケティング活動全体の設計図です。

パーセプションフロー・モデル 設計サービス | FICC

SmartHR 社内のマーケターの方々が更新しているnoteによると、パーセプションフローに基づいたコンテンツが以下のようにマッピングされているとのことです。

ebookマッピングの例

事例記事マッピングの例

引用:「YoY 200%」SmartHRリードジェネレーションデジタルの成長軌跡とこれから|yoshinorisuzuki|note

これによって、

  • お客様のフェーズごとに、どのようなコンテンツが必要なのか
  • すでにあるコンテンツは 本来の機能を果たしているのか

といったことが可視化され、 ブラックボックス化しやすいオウンドメディアの運営方針が明確化されます。

社内のマーケターの方々の情報発信も積極的に行われているので、一読をおすすめします。

SmartHR マーケティング|株式会社SmartHR|note

事例⑥契約ウォッチ(株式会社LegalOn Technologies)

企業名株式会社LegalOn Technologies
オウンドメディア契約ウォッチ
事業内容AI契約審査プラットフォーム「LegalForce」の提供
オウンドメディアの型雑誌型
コンテンツ契約書に関する用語解説・最新情報
記事本数・公開頻度随時更新

契約ウォッチの特徴

  • 社内の弁護士資格者が企画段階から入り、執筆・校閲がなされている
  • 法改正が一目でわかる「法改正カレンダー」が更新されている
  • オウンドメディア内に「動画学習」ができるページを設けている

「契約Watch」は、総務・法務部門の担当者に向けた、契約書に関する最新情報をアップデートするためのオウンドメディアです。

特徴として、法改正が一目でわかる法改正カレンダーの提供、検索しやすい情報分類システム、オリジナルキャラクターによる図や具体例を用いた分かりやすい解説が挙げられます。

法改正カレンダー

SEO観点では「約款」「nda」などのビッグワードでも、契約書や法改正に関するキーワードで、軒並み1位に表示されています。(2023年4月時点)

コンテンツの制作は、以下のように社内の弁護士と綿密に連携しながら行っているようです。

弁護士に企画段階から入っていただくとともに、記事の執筆も弁護士にお願いしています。また、ダブルチェックも兼ねて、執筆した方とは別の弁護士に校閲に入っていただくことで、信頼度の高い、正確なコンテンツの提供を実現しています。

引用:https://markezine.jp/article/detail/39742?p=2

また、海外で積極的に取り入れられている、無料の動画講座を用意しており、会員登録することで法務の知識を学ぶことができます。

動画学習講座

コンテンツの制作体制や、メディアのUI、動画講座への投資など、リソースは非常にかかりますが次世代のオウンドメディアとして参考になることが非常に多いと感じます。

事例⑦HubSpot 日本語ブログ(HubSpot Japan株式会社

企業名HubSpot Japan株式会社
オウンドメディアHubSpot 日本語ブログ
事業内容インバウンドマーケティング/営業/カスタマーサービスソフトウェア提供
オウンドメディアの型
雑誌型
コンテンツマーケティングやセールスに関するノウハウ/海外トレンド
記事本数・公開頻度1000記事以上/月に30〜40本

HubSpot 日本語ブログの特徴

  • あえてリード創出をメインの目的にしていないインバウンドの思想
  • 社内外のメンバーを入れた約50名体制
  • SEOを意識したトピッククラスターモデルに基づく戦略

「HubSpot 日本語ブログ」は、マーケティングやセールスに関わる方に向けて、コンテンツを発信しているオウンドメディアです。

注目すべきはコンテンツマーケティングに対する「インバウンド」の思想です。

ブログ経由のリード創出のみでROI(投資対効果)は判断していません。ブログのコンテンツは、直近の新規売上だけではなく、認知拡大やHubSpotファンの創出、既存顧客とのエンゲージメント向上にも広く影響するからです。
(中略)
もちろんKPI関連の数値は日々チェックしていますが、あくまでブログは「ビジネス成長に携わる人たちへ課題解決のヒントになるようなTIPSを提供することに徹する」と決めています。短期的な採算は度外視している、とも言えますね。

https://sairu.co.jp/method/5316/

多くのBtoB企業がリード創出を目的にオウンドメディアを運営する中、HubSpotはリード創出をメインの目的には置いていません。これにより、ブログが自然なブランド接点となり、読者が抱く「資料ダウンロードの強要」や「メルマガ登録への過剰な導線」の印象を払拭しています。

それでも、2019年7月~2021年4月における「HubSpot 日本語ブログ」のオーガニック流入(トラフィック)とリード数を見ていると2020年1月から1年間にわたって、検索流入は2倍、オウンドメディアを通じたリードの数は3倍になっています。

https://mz-cdn.shoeisha.jp/static/images/article/36529/36529_02.jpg

引用:HubSpotブログ編集長に聞く、BtoBのオウンドメディアで追うべきKPIとトピック選定3つの条件

中堅の非IT業界(建設・製造・物流など)【BtoBオウンドメディア事例】

コロナによって新規営業がデジタル化されたことにより、これまでオフラインの取引が中心だった業界でも、デジタルマーケティングに投資をする企業が増えています。

「これから、ITに投資をしていくぞ!」という社長や幹部の号令をもとに、デジタルマーケティングのプロジェクトが始まるケースが多いのではないでしょうか。

項目詳細
業界・業種製造・建設・物流・医療機器
組織規模30人〜1,000人
市場フェーズ既に成熟しており、業界特有の商慣習が根付いているが、コロナをきっかけに、デジタル化が徐々に進んでいる
事業フェーズ成熟期、次の事業への方針転換
マーケティング状況既存取引先からの紹介、展示会、大企業からの発注等が中心で、
これまでデジタルマーケティングへの投資は積極的に行っていない。
マーケティング課題進め方がわからない/関係者への説明が大変/自己流でやっているが、成果が出ていない
目指すべき型パンフレット型
メディアの目的新規問い合わせの獲得(電話、問い合わせ、資料請求)
営業体制問い合わせ後に営業担当が電話・メールでフォロー
予算100万〜1000万(社内人件費含む)

中堅の非IT業界のオウンドメディアの特徴

強みになりえること

このタイプの企業の強みとしては、以下があります。

中堅の非IT業界のオウンドメディアの特徴

  • 長年にわたり積み上げてきた取引実績や信頼により、実績を前面に出したマーケティング活動ができる
  • 組織に蓄積されている長年の経験やノウハウにより高品質なコンテンツが制作できる
  • 業界によってはオウンドメディアに投資している競合が少なく、検索エンジンでの上位表示が容易なことがある

課題になりやすいこと

一方で、以下の課題に直面することがあります。

中堅の非IT業界のオウンドメディアの課題

  • デジタルマーケティングを推進する上で、他部署の理解を得づらい
  • ベテラン社員ほど、自社がこれまで培ってきたノウハウを表に出したくないという思いが強く、途中でストップの圧力がかかる

特に製造業においては、情報を開示することで競合に模倣品を作られてしまう恐れがあるため、情報発信に懸念を示す企業が比較的多いように感じます。

また、他部署やベテラン社員を巻き込んだコンテンツ制作をしようと思っても、理解を得られずにアポイントの調整が難航するといったことがあります。

成功のポイント

このようなケースでは、泥臭く、社内の人間関係を一つずつ築き上げ、オウンドメディアをやることのメリットや実績を伝え続けることが重要です。

また、経営トップがデジタルマーケティングへのコミットメントを示し、各担当者へ呼びかけることが理想です。

事例⑧ばね探訪(東海バネ工業)

企業名東海バネ工業
オウンドメディア企業サイトばね探訪
事業内容フルオーダーメイドの金属ばね製造
オウンドメディアの型雑誌型
コンテンツバネの特徴や種類など製品情報/取材記事
記事本数・公開頻度100記事以上

ばね探訪の特徴

  • バネの特徴や種類に関する辞書的なコンテンツと、ものづくりの思いを伝えるブランディングコンテンツを発信している
  • 「sk5m」「板ばね」など、ばねの発注を検討する人が検索するであろうキーワードで検索上位を獲得している
  • 年間で新規取引顧客数が100社を超える

東海バネ工業のオウンドメディアはバネ製品に関する情報や技術データを提供すると同時に、取材記事を通じて顧客とのエモーショナルな接点を持っています。

同社のビジネスモデルは完全受注生産であり、カタログが存在しないため、ウェブサイト上で基本知識からビジネスモデルまで把握できるようの情報を公開しています。それによって、「sk5m」「板ばね」などバネの発注を検討する人が検索するキーワードで上位表示ができています。

さらに、「ばね探訪」というオウンドメディアを活用して、モノづくりに対する姿勢が同社と近い顧客を取材し、仕事に対する考え方や社員の思いを記事に紹介しています。

運営体制は社員2名と外部スタッフのライター・カメラマンの4名体制でコンテンツが更新されています。

事例⑨おしえてJSS(日本サポートシステム株式会社)

企業名日本サポートシステム株式会社
オウンドメディアおしえてJSS
事業内容FA装置開発・事前検証
オウンドメディアの型雑誌型
コンテンツFA(Factory Automation)に関するノウハウや製品比較
記事本数・公開頻度400記事程度

おしえてJSSの特徴

  • 専門的なテーマでありながら、400記事近いコンテンツが公開されている
  • 「生産設備立ち上げマニュアル」など、10種類以上のダウンロード資料が設置されているト
  • 「イメージセンサ」などのビックワードを始め、「plc 比較」などコンバージョン近いキーワードで網羅的にコンテンツを作っている

日本サポートシステム株式会社のオウンドメディア「おしえてJSS」は、FA(Factory Automation)をメインテーマとしたコンテンツを発信しています。専門的なテーマでありながら、400記事近いコンテンツが存在しています。

また、「生産設備立ち上げマニュアル」など10種類以上のダウンロード資料が提供されており、ユーザーに役立つ情報を提供しています。これにより、資料請求数も一定の数に達していると考えられます。

さらに、「イメージセンサ」や「plc 比較」などコンバージョンに近いキーワードで「今すぐ客」から「まだまだ客」網羅的にコンテンツを展開しています。

事例⑩物流ジャーナル(吉南株式会社)

企業名吉南株式会社
オウンドメディア物流ジャーナル
事業内容倉庫業/生産請負業等
オウンドメディアの型パンフレット型
コンテンツ倉庫や物流アウトソーシングに関するノウハウ
記事本数・公開頻度100記事程度

物流ジャーナルの特徴

  • 社員がプロフィールを開示して業務の一環で記事を執筆している
  • 「保税倉庫」「倉庫 建設費」などの物流系のキーワードで上位表示
  • 代表がIT分野での起業経験がある

吉南株式会社のオウンドメディア「物流ジャーナル」は、物流業界に関する情報を提供しているメディアです。

特徴として、社員がプロフィールを開示して業務の一環で(おそらく)記事を執筆しています。

さらに、「保税倉庫」「倉庫 建設費」など、物流系のキーワードで上位表示ができており、山口県の会社ながら全国の読者を獲得できていると言えます。

物流企業で、社員自らが名前を出してコンテンツを発信する会社は数多くありませんが、代表自身がIT分野での企業を経験したことにより、全社的に情報発信がよしとされる文化になっていると考えられます。

社員5000人以上の大手企業【BtoBオウンドメディア事例】

いわゆる業界大手企業のオウンドメディアの考え方です。

項目詳細
業界・業種製造/通信/人材など幅広い業界
組織規模社員数5000人以上
市場フェーズ大小様々な事業があり、事業によって異なる
事業フェーズ事業によって大幅に異なる
マーケティング状況各事業部によって独立して行われている。
特定の事業部のマーケティング責任者が、自部署のマーケティングを行うケースが多い。
マーケティング課題自部署が携わる商材の認知拡大、新規顧客獲得、既存客との関係性づくり
目指すべき型パンフレット型→雑誌型
メディアの目的商材の認知向上/見込み客の獲得/商談化
営業体制問い合わせ後に営業担当が電話・メールでフォロー
予算500万〜数千万(社内人件費含む)

大手企業のオウンドメディアの特徴

強みになりえること

この企業の強みは以下のようなものです。

大手企業のオウンドメディアの強み

  • SEOの観点では非常に強力なドメインであり、一定品質のコンテンツを一定量作り切ることができれば、大きく集客を増やせる可能性が高い
  • 社内で専任(に近い)担当者をアサインし、オウンドメディア運用を長期的に内製化できる可能性がある

特に「①特定キーワードのSEOで勝てる可能性があるか」でも述べたように、ドメインが非常に強力であるため、その業界においてはどんなコンテンツを作ってもSEOで上がる可能性があります。(その市場にマッチしていない、サイトに問題がある場合を除く)

また、社内で専任に近い担当者をアサインできれば、社内の事例を踏まえたオリジナリティの高いコンテンツを作ることもでき、長期的に運用を内製化できる可能性もあります。

課題になりやすいこと

一方で課題としては以下のようなものがあります。

大手企業のオウンドメディアの課題

  • コンテンツを公開するまでの社内確認に時間がかかり、スケールしにくい
  • オウンドメディアでプロモーションする対象の商材が多くあるため、リソースが分散し、成果が中途半端になりがち
  • オウンドメディアの運用が初めての場合、社内の承認を得るためのハードルが高く、企画〜リリースまでに多大な時間を要する

BtoB企業の場合、顧客の要望に応じて商品ラインナップが非常に細かく細分化されているケースがあります。

例えば同じ企業の中に「OA機器リース販売」「セキュリティソリューション」があった際、それぞれの顧客を獲得するためのコンテンツは全く異なり、サイトの構造も見直す必要があります。

また、コンテンツ制作においては、社内チェックに時間を要するため、企画〜公開までに6ヶ月かかることもあります。そのため、公開までのリードタイムを短縮しつつも、公開本数を担保するなどの工夫が必要になります。

成功のポイント

大手企業の成功のポイント

  • 社内の関係者にオウンドメディアの目的や成果、求める協力をしっかりと説明する
  • オウンドメディアの目的を明確にした上で、獲得したい顧客像を絞り込んだ上で取り組む
  • 小さな成果を関係者にできる限り共有し、プロジェクトが前進していることを伝え続ける

特に大手企業でオウンドメディアに取り組む際、関係者の知識の差が大きくなりやすいです。

そのため、

  • 「SEOとは何か?なぜ長文を書かないといけないのか?」
  • 「なぜ自社のPRばかりでなく、顧客に役立つコンテンツを作る必要があるのか?」

など、関係者の一つ一つの「なぜ」にしっかりと答えることが重要です。

立ち上げの壁をクリアし、成果が出始めると社内理解も得られやすくなるので、立ち上げのフェーズは最も踏ん張りどころです。

事例⑪wisdom(NEC)

企業名NEC(日本電気株式会社)
オウンドメディアwisdom
事業内容システム・インテグレーション/サポート(保守)
アウトソーシング/クラウドサービス/システム機器
オウンドメディアの型雑誌型
コンテンツビジネストレンド/テクノロジー/イベントレポート
記事本数・公開頻度1000記事程度/月間10~20本

wisdomの特徴

  • 84万人の会員の中で、既存会員を主な対象としてコンテンツを作成
  • 2004年から運営されており、国内外の最先端のビジネストレンドやテクノロジーの情報を発信
  • 自社の社員が企画したコンテンツを、外部のライターに依頼する体制

NECのオウンドメディア「Wisdom」は、2004年から運営されている国内外のビジネストレンドやテクノロジーの情報を発信する老舗メディアです。

2022年時点で約84万人の会員がいる「Wisdom」では、自社の顧客ペルソナにあった人をターゲットに、コンテンツを作成しています。母数がある程度揃ったことから、既存の会員をターゲットにした編集方針が取られています。(参照:オウンドメディアだからできることを探求する。NEC「wisdom」の未来

また、「Wisdom」では、自社の社員が企画したコンテンツを「コンテンツ企画シート」に記入してもらい、記事の対象や目的、お客様にとってどういう課題や解決に役立つかを明記した上で、外部ライターに発注するという運用になっているようです。

ここまでの顧客基盤を持ち、安定した情報発信をできている企業は少なく、いきなりWisdomのようなメディアを目指すには無理があるでしょう。

事例⑫キーエンス

企業名株式会社キーエンス
オウンドメディアセンサとは.com安全知識.comなど各製品ごとに存在
事業内容センサ、測定器、画像処理機器、制御・計測機器、研究・開発用 解析機器、ビジネス情報機器
コンテンツ製品の周辺知識
オウンドメディアの型パンフレット型
記事本数・公開頻度オウンドメディア数80サイト程度

キーエンスのオウンドメディア群の特徴

  • 製品ごとに特化した「パンフレット型」のメディアが合計で80サイト近くも開設されている
  • 製品サイトで獲得しきれない疑問を、オウンドメディアで拾える仕組みになっている
  • 全ページのファーストビューに、解説資料のダウンロードあり

BtoBマーケティングのお手本として有名な、キーエンスのオウンドメディアです。

特徴としては、製品「パンフレット型」のオウンドメディアが存在しており、製品サイトだけでは解決できない疑問を解消できるコンテンツが存在します。

キーエンスのオウンドメディアを一覧化すると、これほどの量になることに圧倒されます。

キーエンスのオウンドメディア群

例として、生産工程などで発生した静電気を取り除く「イオナイザ」に関するオウンドメディア「静電気ドクター」を見てみましょう。

図:静電気ドクター(オウンドメディア)のキーワード戦略

キーワード検索数順位カテゴリヒットページ
イオナイザ5901位商品ページ/products/static/
イオナイザーとは7202位静電気ドクター/products/static/static-electricity/step/ionizer.jsp
イオナイザー 使い方502位静電気ドクター/products/static/static-electricity/ionizer/point.jsp
イオナイザー 原理5901位静電気ドクター/products/static/static-electricity/step/ionizer.jsp

キーエンスのオウンドメディア戦略としては、商品に関連する疑問にはメディアで答える形になっています。

また、ほぼ全ての記事にPDFのダウンロード資料が設置されており、ここで訪問した見込み客の個人情報を獲得しています。

BtoBオウンドメディアの立ち上げ、コンテンツ作成ならシノビクスへ

オウンドメディア立ち上げ、運用についてこのようなことでお悩みではありません?

  • オウンドメディアを立ち上げたいけど、何から始めたらいいか分からない
  • 適切なKPI設定、費用対効果の算定方法が分からない
  • ライターやデザイナーなどコンテンツ制作のための適切なチーム編成が分からない
  • 記事を量産しているけど、コンバージョンや売上につながっていない

シノビクスでは、社員数名規模の企業から、東証プライム上場企業に至るまで、数々のBtoB企業のオウンドメディアを支援し、結果を出してきました。

  • 月に数本のコンテンツを作り、継続的に受注につながる問い合わせを獲得している、少数精鋭のコンサルティング会社
  • ニッチな業界ながら、どのキーワードで検索しても1位か2位に表示され、月間100~200件以上ものリード獲得型をしているオウンドメディア
  • 立ち上げた後、8ヶ月程度で累計数百件のリード獲得に寄与したツールベンダーのオウンドメディア

といった事例を中心に、これまで50サイト以上のオウンドメディアの支援を行ってきたシノビクスが、BtoB企業特有のオウンドメディアの課題を解決します。

まずは、サービスの詳細をご覧ください。

オウンドメディア支援の詳細を見てみる

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この記事の著者

長屋智揮

XINOBIX(シビクス)株式会社 代表取締役。大阪府出身。同志社大学在学中にインドで情報誌の立ち上げを経験。卒業後にレバレジーズ株式会社に入社。2016年にXINOBIX株式会社を起業し、インド進出支援業をスタート。その後、英会話スクールの比較サイトを起業しウェブリオ(現GLASグループ)に売却。その間、複数の企業でインハウスのSEO責任者や事業部長を経験。2021年に再度当社を専業とし、現在はコンテンツマーケティング支援業を行う。趣味は釣り。